2012年5月22日火曜日


 (6) モーリス・ラヴェル

(1) モーリス・ラヴェル―――ピアノ協奏曲ニ長調

……フォーレに似て、また、リストに似て、ラヴェルは右手の型どおり
の優位を覆す。ラヴェルが特に左手を重んじたことは、作品の全てが、それ
を我々に語っているが、とりわけ、「左手のためのコンチェルト」である、片手
の「コンチェルト」がそうである。

ウラディミール・ジャンケレヴィッチが、その著書で、以上のような文を
書いています。ソルボンヌで哲学の教鞭を執る、この人らしい、独自のラヴ
ェル論が展開されています。それでも、ここに紹介した文にあるように、この
バスク出身の作曲家、この彼の本質の一つである「古典主義」を、しっかり
と踏まえた文であることがわかります。

たとえば、「ボレロ」が、二つの旋律を最後まで続け、変化はオーケス
トレーションの変貌からのみ、生れてくるという、かつて例の無い管弦楽曲
を、ラヴェルは、この世に創出しました。これもまた、「古典主義者」としての、
極限への志向に他なりません。

「左手のための協奏曲(コンチェルト)」に戻ります。
左手だけが奏でる曲に、私達は、あたかも、両手によって演奏されて
いる曲であるかのような感銘を受けるのです。古典主義者としての心意気、
躍如たるものがあります。

世紀末(19世紀末)、グスタフ・クリムトの絵画に見られる、当時とし
ては、最も現代的な趣向が、ウィーンを覆っていました。ライナー・マリア・リ
ルケも、クリムト同様、その恩恵に与ったという有名なパトロナージュの実業
家・ヴィトゲンシュタイン一家に、異彩の学者がいました。
ルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタイン。ケンブリッジ大学で、ラッセルや、ラ
ムジーなどの同僚として、学問的成果を賞賛されている哲学者です。彼の
すぐ上の兄が、第一次大戦で右手を失いました。この片手だけのピアニスト
のために作曲された曲としても、知られています。

  • 回答日時:2011/8/29 18:29:11

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