(11) 芭蕉 と 杜甫
杜甫は、強い政治理念の持ち主だった。したがって、彼の詩には、社会の紊乱、政治の腐敗がしばしば語られている。
西暦756年、混乱の世相のうちに、彼は反政府軍に囚われ、長安(都)で、幽閉の身となった。
芭蕉は、典型的な詩人だった。俳諧の旅路で、殊更、胸打たれた「平泉の情景」に、彼の詩心「無常観」が自然なかたちで顕現した。
「国破れて山河あり、城春にして草木深し」(杜甫)
「国破れて山河あり、城春にして草青みたり」(芭蕉)
杜甫は、自ら在籍した政治体制の崩壊に直面し、幽閉の身として眺める現実の姿を、悲劇的な心情を以って詩に詠んだ。
芭蕉は、目前の風景の中に、藤原三代の栄華と没落、それに重ねるように、源義経と部下達の悲劇を思い起こしていた。
杜甫は、現在進行中の時世についての詠嘆を詩にしたが、芭蕉は過ぎ去った日の(歴史上の)想念を、彼の芸術を創出する「無常観」で詩にした。
杜甫は自ら身を置く現在を、詠った。芭蕉は過去に遡る想念のなかに、無常を詩った。その違いが、「草木深し」(現在)と「草青みたり」(過去)となって、現わされている。
- 回答日時:2011/11/21 01:44:53
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